泡沫と戦う片歌(笑)
片歌(かたうた)をご存知だろうか。
歌の世界(とはいってもLemonやマリーゴールド、およげたいやきくんのような所謂音楽としてのものではなく、昔の詩を指す方の歌である。)にはポピュラーなものに俳句、川柳、短歌、和歌などがあり、日本人ならばそのフォーマットは大体理解していることだろう。例えば俳句、川柳は互いに5・7・5の定型を採っているが、両者の違いは季語の有無である、また和歌、短歌は互いに5・7・5・7・7の制約に縛られるが、美の投影先に内面を指定するか、外界を指定するかの違いがある、と言った具合にだ。
しかし、それが片歌となると事情は異なってくる。そもそも、片歌が義務教育の指導要領外であることは身を持って逆説的に知っているはずであるから、いきなり打ち込まれた死角からの攻撃をモロに食らったアシタカさながらにサン憺たる気分になっているかもしれないが、今回は片歌について長々と書き連ねるつもりではないので安心してほしい。
さて、話題がややずれてしまったので、軌道修正がてらに片歌の説明をさせてもらう。
片歌とは、5・7・7という初心者からしたらアンバランスにも思える三句からなる歌のことである。
有名なものにヤマトタケルの詠んだものがある。
「はしけやし 我家(わぎえ)の方よ 雲居立ち来も」
実際声に出してみると、丁度、和歌や短歌の終わり三句をなぞっていることに気付かされた。そう考えると、なかなか悪くはないのかもしれない。
以前、どこかで同じ感情を感じたことがある。あの時だ。小2の夏、初めてブラックコーヒーを美味しいと感じたあの時だ。
俺の家にはかなり本格的なドリップメーカーがある。今ではすっかり使わなくなってしまったが、カップボードの大窓にしっかりと構えている。当時の俺は、「この歳にしてコーヒー(激甘)を飲める自分」に陶酔していた節があったが、それ以外の、俺をコーヒー好きにさせる要因こそがドリップメーカーであったのだ。
コーヒーを飲む時、決まって俺がドリップメーカーに冷水を飲ませてやった。ドリップメーカーは赤いライトを光らせ水槽の部分を照らす。すぐに気泡がポツポツと上がってくるのが見える。そこで今度は腐葉土のようなコーヒー豆の粉塵を用意するのだ。水の怒りが頂点に達した時、粉塵をドリップメーカーの上部にあるポケットに入れる。あとはドリップメーカーが茶色の液体を排出するのを待つだけだ。(なれない擬人法なんか使うもんだから、クライマックスがドリップメーカーの排泄シーンになってしまった。あとドリップメーカーって幅取りすぎだし、PCの予測変換に残るのもなんかいやなので以降DMにするわ。)
そしてコーヒーが出来上がった時、俺はある決意をする。男ならば越えなければならない壁(わさび、虫、逆上がり、二重跳び、ブラックコーヒー)の一つを越えようとしたのだ。
俺「今日は、お砂糖入れない。」
母「中苦(ちゅうにが)だぞ。苦いんだぞ。口の中悶々しちゃうぞ。」
俺「Fuck you bitch」
母「オウフッwww 【悲報】息子氏、反抗するwwwww」
俺「童謡 アメリカばあちゃん」
母「くぁwせdrftgyふじこlp(完璧に発音できている)」
俺「では、さっそくいただきマンコwwwww」
母「(泣)」
初めて飲むブラックコーヒー。たしかに最初は苦かったが、それを上回るほどの濃い香りに包まれ、不思議な感覚であった。悪くない。
そして、現在、俺は伝説のコーヒーを求めて全国を行脚するさすらいの身。俺のゆく先々でおこるトンデモ超事件。俺の許嫁だと言いはる謎の美少女に、ストーカーまがいの令嬢、クールで無口なメガネっ娘や天真爛漫な後輩に囲まれて俺の毎日は散々に……
「クソぉぉおおおっ 俺の日常を返してくれ~~~~~!!」
死んじまえ クソキモ野郎 泡沫の夢