掃き溜め(笑)

掃き溜め(笑)

多い霧(笑)

夜明け頃、雨が降ったらしい。朝、目覚めると、外は霧がかっていた。

霧を見ると必ず思い出すのは、母親と2人で山陽自動車道を走る春先の風景だ。

 

俺は毎年、中学3年の春まで習い事の大会に出場するために広島を訪れていた。初めのうちは車での長旅は大会への緊張から、旅行感覚というよりは息の詰まる閉鎖空間でしかなかったが、安定して結果が出せるようになってきた小学5年生を迎える頃には生意気にも自然の風流を楽しむ事ができるようになっていた。

 

カーステレオからはSMAPの曲が絶えず流れていた。母親と俺の共通項でもあるSMAPの曲は2人の長旅を鮮やかに彩った。

 

中でも当時の俺が好きだったのは、森君脱退以前の曲では「ずっとわすれない」「$10」「オリジナルスマイル」「がんばりましょう」「KANSHAして」「しようよ」「俺たちに明日はある」「ハダカの王様」、脱退以後では「青いイナズマ」「SHAKE」「ダイナマイト」「夜空ノムコウ」「たいせつ」「Fly」「Let It Be」「らいおんハート」「Smac」「BANG! BANG! バカンス」「Triangle」「Dear WOMAN」「ありがとう」「弾丸ファイター」「White Message」「この瞬間きっと夢じゃない」「This is love」「僕の半分」「Moment」等だった。

 

シングルしか書き連ねていないが、それ以外の曲を紹介するにはあまりにも余白が少なすぎるので、今回は控えておく。

 

昼過ぎ頃になると広島へ到着する。そこからホテルにチェックインし、会場へ前乗りして練習をする。練習が終わるといよいよ緊張がピークに達する。逸る気持ちを抑え、ホテルへ戻る。

 

翌日、待ちに待った大会当日。雲ひとつ無い晴天で。呼吸を大体15000回繰り返したところで大会は終わった。

 

その後、帰路につくことになる。明日は月曜。通常通り学校がある。クラスのみんなはいつもと同じ休日を過ごしたのだろうか。俺は手に35個入りのせんべいを抱えて教室に入るのだから好奇の目にさらされてしまっても仕方ない。日常と非日常の狭間で日が落ちるにつれ、精神は揺らぐ。SMAPの曲が頭を駆け抜ける。小さな達成感の代償に、輝く日常が精神から乖離して、いまや輝きを失ってしまっている。並行して存在する2つの自己のうち、輝く方に手を伸ばす。金属的な冷たさと暖かさが手をつたい、口角を持ちあげる。

 

4位と記されたくすんだ満月は煌々と俺を照らした。

 

 

 

コレがホントの 大イキリ なんつってね。